香り

黒胡椒の香り

黒胡椒

黒胡椒とは、胡椒の木から採取された緑色の実を、乾燥させ黒色に変色させた香辛料です。

黒胡椒

同じ胡椒の木から作られる香辛料として、白胡椒が挙げられます。白胡椒は、胡椒を赤色に熟してから収穫し、水につけて外の皮を剥いて内側の白い部分をのみを取り出し乾燥させて作られます。

白胡椒

一般的に黒胡椒は白胡椒より風味が強いため、ワインのテイスティングにおいて、黒胡椒は赤ワインのアロマを表現するために、白胡椒は白ワインのアロマを表現するために使用されることが多いです。

他にも、未熟の胡椒の実を機械乾燥させて作ったグリーンペッパーがありますが、ワインのテイスティングコメントにはあまり見かけません。使い勝手はよさそうなのですが。

黒胡椒の香りは、主にワインの「第一アロマ」に分類されます。

黒胡椒の香りをよく感じる品種としては、シラーが挙げられます。特に、北部ローヌ地方のシラーからは、しっかりとした黒胡椒の香りを感じることが多いです。

黒胡椒の風味の由来

クローブやナツメグ、甘草などのスパイスは、主に樽に由来する第三アロマに分類されます。しかし同じスパイスでも、黒胡椒のアロマは第一アロマに分類されることが一般的です。これはなぜなのでしょうか。

北部ローヌ地方のシラーなどから感じる黒胡椒(及び白胡椒)の香りは、ロタンドンという化学物質に由来することがわかっています。

ロタンドンは、ワインだけではなく実際に胡椒、そしてタイムやオレガノなどのハーブにも含まれていることが知られています。

このロタンドンは、特定のぶどうの果実に多量に蓄積されることがわかっており、シラーはこのロタンドンを多量に含むため、特徴的な黒胡椒の香りが感じられるのです。

黒胡椒の香りが第一アロマと呼ばれるのは、このためです。

他にロタンドンが多量に含まれている品種としては、オーストリアのグリューナー・フェルトリーナーや、イタリアのスキオペッティーノ、ヴェスポリーナなどが挙げられます。

黒胡椒の香りを感じない人がいる?

特異的無嗅覚症

ロタンドンは、水1リットル中に8ナノグラムという非常に低い濃度でも知覚できるくらい強烈な香りです。しかし驚くことに、遺伝的に五人に一人がこのロタンドン由来の黒胡椒の香りを全く知覚できないことが知られています。

このような、特定の香り知覚できない症状を特異的無嗅覚症と呼びます。

シラーの特徴的な黒胡椒の香りを感じないというのは、ワインのテイスティングにおいてかなり不利であることが容易に想像つきます。

実際、自分もはじめはシラーの黒胡椒の香りをとるのが苦手であり、今考えると自分もこの特異的無嗅覚症であったのかなと思っています。

特異的無嗅覚症は克服できる?

みなさんの中にも、シラー特有の黒胡椒の香りを取ることが苦手な方がいると思います。その中には実際にロタンドンの香りを感じ取れない特異的無嗅覚症の方も一定数いてもおかしくありません。

しかし、落胆するのはまだ早いです。

特異的無嗅覚症は、度重なるトレーニングである程度解消できることが知られています。

特異的無嗅覚症を示す化学物質の他の例として、アンドロステノンが挙げられます。

アンドロステノンは、豚やトリュフなどから感じられる尿や森林、そして花など多様に表現される香り物質ですが、およそ二人に一人がこのアンドロステノンの香りを知覚することができません。

しかし、アンドロステノンを知覚できない人でも、アンドロステノンにさらされ続けると知覚できるようになるとの実例が報告がされています。これは、何かの拍子にアンドロステンの感受性が引き起こされるからだとされています。

したがって、ロタンドンの香りも度重なるトレーニングを経れば、特異的無嗅覚症の方でも知覚できるようになるかもしれないということです。

実際に自分もテイスティングを何回も行うことによって黒胡椒の香りを嗅ぎ分けられるようになりました。

今となっては自分が特異的無嗅覚症であったかどうかはわかりません。しかし、確率的に黒胡椒の香りを取るのが苦手な方もいることは自然であり、それは仕方ないことです。そして、黒胡椒の香りは訓練によって感じ取れるようになりうるものかもしれないということを今回知っていただけたら嬉しいです。

Equinoxe Crozes-Hermitage

フランス、北部ローヌ、クローズ・エルミタージュのシラーです。北部ローヌなどの冷涼な気候で栽培されたシラーからは、この黒胡椒の香りが強く感じられるとされています。

外観は漆黒さを感じるダークチェリーレッド。香りは、熟したカシスやブラックベリーの果実のボディに、それを突き抜ける鼻をつんと刺激する黒胡椒の香りが印象的です。タイムやローズマリーなどのスパイスやハーブ、そして生肉やタバコ、ブルーベリーヨーグルトなど香り要素に富みます。アタックは力強く、すぐに凝縮した果実の風味が広がります。タンニンのシルキーなヴェールは、アルコールや果実の甘味を優しく包み込み、スパイスの風味とともにゆっくりと濃密な余韻へと導きます。

ドメーヌ・デ・リゼ クローズ・エルミタージュ エキノックス

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